2010年07月26日

社会人になって観た映画「サンダカン八番娼館 望郷」

  この作品は私に別な意味で戦争の悲劇を語ってくれた作品です。戦争と言えば戦闘シーンを思い浮かべますが、この作品は戦闘シーンは全く出てこないで、戦争によって青春を奪われ歪められてしまった人間の姿を描いています。
若い私には戦争と言えば悲惨な戦闘シーンしか知りませんが、それ以上に戦争に駆り出されて行った女性の悲劇が丁寧に描かれています。
  それは女性史家を通してからゆきさんという存在を描いた作品でした。
私は最初この作品があまり好きではありませんでした。若い私には重いし、やりきれない思いをしたからです。
そしてからゆきさんという存在も初めて知りましたし、戦争で翻弄される人間の姿にへえーと思うばかりで、その内容や意味さえ判っていなかったのです。
  初めて観てからこの映画は何故か観る機会が幾度とあり、数年後にようやくこの映画の重みを知ることになるのです。19歳では無理もありません、戦争を一面しか捉えていないのですから。昔のお話と言えばそれまでですが、当時そのような経験をした女性が幾人いたことでしょう。もしその時代に生まれていたらとか、そのような境涯になっていたらとかを考えるようになったからです。人の運、不運ではかたづけられない問題です。戦争を描かず、戦争の内部まで迫って来るのです。貧乏ゆえ海外まで売られていく少女達。それは死しても日本に背を向けて建って墓石が、それらの人々の心情を雄弁に語っています。
  しかし私にはどうも映画の語り口がしっくりこなくて途中ドキュメント風になったり、ドラマ風になったりと何となく入りきれない部分がありました。それは私の勝手な言い分で映画の評価とは異なりますが、キネマ旬報でも確か1位になりましたが、私的にはそんなに上位には入れなかったと思います。
それはそれとして今思うと、立派な映画だと思います。寡作な熊井啓監督が渾身の力を込めた力作だと言えます。戦争の、そして貧乏のゆえ、日本人の偏狭な考えを見事に語ってくれている名作だといえますが、ほとんど銀幕でリアルタイムで田中絹代を観た事がなかった私にはこの作品が最後となったと思います。この作品以後、田中絹代という大スターの作品を沢山観ましたが、正に日本人の体格を持った愛すべきスターだったことを知りました。相手役の栗原小巻も大変だったろうと思います。何をしてもこの小さな老婆に食われてしまいます。それも判る気もします。それから数年後田中絹代も結構若くして鬼籍に入ります。・
posted by ヒロシ・マックイーン at 16:53| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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