家族にそのような人物がいることを限定でこの物語は作られています。確かにそのような存在はいます。兄弟に迷惑をかけたり、悩みの種の存在です。しかし家族というか兄弟は縁が切れないというか、どうしようもない存在でも愛すべき人というか、心の奥には消せないものがあるということをこの映画は教えてくれます。それが大げさに言えば人生というものかも知れません。そりゃあ楽に何の問題もなく過ごしたいものですが、そう簡単に排除出来たり、消せる問題ではないことを語っています。またそのことで人生はままならぬ事を知り、人間も育っていくのですが、近頃はその面倒なことを排除したり、消してしまおうとしていることを山田監督は感じているのではないでしょうか。
しかしこの鉄郎は最後まで姉に迷惑をかけて死んでゆくのです。この弟の存在は一体何だったのだろうか。他人に頭を下げ続け、大金まで見知らぬ女に渡す羽目になり、とうとう唯一の見方である姉にも見放されます。映画は語ります。早く亡くなった吟子の夫から娘の名付け親になったもらった理由。そんな優しい気持ちもその鉄郎には伝わっていたのかどうか・・・。しかしその理由を聞いたとき娘の小春も私たちも何故かハッと思わすシーンでした。そんな優しさを私たちは日頃から感じ持ち合わせているのだろうかと。日頃の忙しさや身を削るような社会に暮らす私たちは忘れている気持ちではないかと思わせます。
続く